白川街道の東白川村は神秘的な村である。村民の母なる川と親しまれる白川とその支流に沿って集落が点在し、人口は約2500人。苗木藩の廃仏毀釈運動により日本で唯一、お寺のない自治体でもある。
白川街道はツチノコ伝説をあちらこちらで耳にするが、鶏ちゃん伝説に名を連ねるのではないかと思えるぐらい昭和の香りを漂わせているのが東白川村にある一軒の焼肉屋「白草」だ。
8月31日(金)の午後3時、鶏ちゃん合衆国鶏CIA長官の山本慎一郎さん(山本佐太郎商店代表)を隊長に交流長官酒井稔さん(一級建築士)、消費者長官村山弘明さん(村山チキンセンター社長)、国務長官都竹淳也さん、大統領長尾伴文とでその白草に入った。
店内はテーブルの間に立てかけられた仕切りカーテンが妙に目に付き、赤茶けたカウンターの向こう壁には「鶏ちゃん合衆国認定書 白草殿~鶏ちゃん合衆国の州として認定する~平成24年7月20日 鶏ちゃん合衆国大統領 長尾伴文」と記された認定書が格調高く額に入れて飾ってある。木の村らしくヒノキに墨字でお品書きが作られている。畳座敷の部屋からは白川の流れが眺められちょうどこの季節、鮎釣り人の姿が点々と続く。
今なお現役で店を切り盛りする大女将の安江冨貴子さん(80歳)は「とにかく食べて行くために何かしなければと思い立ち昭和44年にこの焼肉屋を始めました。創業時から鶏ちゃんは看板商品で親鶏(ひね鶏)使っています」ときちんと背筋を伸ばし語られる。どうやら昭和44年の創業時から今日まで東白川村の白川街道沿いには鶏ちゃんが食べれる店は出現しなかったようだ。
調理を担当する中島豊彦さん(56歳)は「親鶏は長く飼われることもあり皮や筋はとても強く硬くなります。もちろん肉も同様で、良く言えば肉はぐっと引き締まり独特の歯ごたえと香ばしさがありますが、悪く言えばとにかく硬い肉です。しかし、けいちゃんには親鶏を使うことが白草の特徴であり白草の「味」なのです」と強調される。
さらに中島さんは<筋引きひね鶏>への思いが強い。それは親鶏を使うとなれば、より良い食感にするために皮や筋を取り除き肉だけにしなければならずその作業が<筋引き>で、細かく手間がかかり腰を痛めるそうだ。では手間がかかれば美味しくなるのかとなればそうだとは言えないようで、言えるとすれば珍しい味、つまり他所には無い味になるだろうということだ。
タレについては「ミックスした八百津の味噌に何種かの香味料を混ぜ合わせた秘伝の味付けですが、長く漬け込むことはせず注文をいただいてからサッとまぶし揉むような感じです」と大女将さんが説明する。
鶏ちゃんを焼く姿も白草は独特だ。あえて焦げ目を付かせる。黒光りの鉄板は平らである。タマネギ、キャベツ、モヤシの三つの野菜が細切りに添えられている。黒いタレの入った二つの小鉢が差し出される。一つはニンニク味、もう一つは生姜味。焼けた鶏ちゃんに味は付いているが、お好みでタレをつけて食べる下さいということだ。
【白草】
岐阜県加茂郡東白川村神土424-3
TEL0574-78-2164
営業時間 午前11時~午後9時(8時入店まで)
定休日 水曜日
(文:長尾伴文大統領)